さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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14年ものの酔い

2008/10/28 18:56 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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 furugihaihu.jpg
古着配布風景

 9月末、サブプライム問題とリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した国際金融市場の混乱と世界恐慌寸前の景気の後退。その影響もあってタイバーツの為替レートも円高に傾いてきている。円建てで支援を受けているさくらプロジェクトにとってはありがいたい話じゃないかなどと内心ほくそえんだのは、経済に疎い素人の浅はかさがなせるぬか喜びであった。

 金融危機の影響は思いのほか早く、しかも直接的にさくらプロジェクトにも現れた。

10 月なかばのある日、3年前からさくら寮生の一部が奨学金支援を受けているオランダのある財団から、突然のメールが届いた。

「親愛なるさくらプロジェクト様  非常に残念な気持ちでこの手紙を書いています。

この数週間世界の金融市場が大変な危機に瀕していることはご案内のことと存じます。証券市場は破壊され、多くの銀行は政府の援助を受けています。当財団も今回の金融危機から大打撃を受けました。我々の慈善事業は全て、投資からの金利でまかなってきました。これらの投資のかなりの元本が目減りすることは避けられそうにもありません。

以上の理由により、当財団の理事長は、フィリピン、タイ及びカンボジアの関連団体への資金の送金を直ちに停止するよう指示しました。

 当財団は11月24日に理事会を開催し、今後の財団の運営方針を決定し、皆様との将来にわたる関わり方を決めることにしております。理事会の決定が下り次第、直ちにご連絡申し上げます」

 嗚呼! さくらプロジェクトは年間予算の約15%をこの財団に頼っているのだ。これはかなり痛い。

 さくらプロジェクトの支援者の中にも証券関係の仕事をしている人は多いし、趣味と実益を兼ねた株の儲けを利用して支援している人も少なくない。そういう人たちが、今後、支援を継続していただけなくなるという恐れも十分ある。まあ、不景気になれば真っ先に予算が切り捨てられるのは私たちのような活動の類であるのはわかっているのだが、本当に先の見えない時代になったものだ。

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右からモン族のポンパンさんと畑先生

暗い話はこのぐらいにして、ちょっといい話を。

この夏、芝浦工大建築工学科の畑總一教授をはじめとする研究室の学生さんたちがさくら寮に滞在した話は前号で書いたのだが、今回のメインの目的はチェンラーイ県パヤメンライ郡のヤオメタム村というモン族の集落調査だった。

この村には14年前に同じ芝浦工大の畑研究室が調査にきており、今回はその後の集落変遷の追跡調査になるのだが、あのときは大学院生の神田君ほか 学部の学生2名が1ヶ月以上もお世話になった。

そのときホストファミリー として彼らの面倒をみてくれたのが、当時30歳そこそこで、新婚ほやほやだったポンパン・センチャンさんというモン族の男性だった。正直で礼儀正しく、とても頭がきれ、農業研修のため熊本にも1年ほど滞在したことがあるというだけあって、日本語もかなり達者である

久しぶりに再会したポンパンさんも今は40代半ば。さすがに少し老けたけれども、日本語はそれほど錆びついていない。村に着いた最初の日の夜、畑研究室の面々十数名を前に、歓迎の挨拶もそこそこに、ポンパンさんは嬉々として古びた木棚の中から蜘蛛の巣と埃にまみれたウィスキーの瓶を出してきた。蓋はガムテープでぐるぐる巻きにしてある。中身はトウモロコシの焼酎だという。

「まあ、まずはこれをみなで飲みましょう。本当は神田さんと一緒に飲まなければならないのですが、もう14年もたって、彼も忙しくて来られないみたいだし、畑先生は神田さんの恩師だから、先生を代理人にすることを許してくださるでしょう」

14年前、ホームステイを通じてすっかり打ち解けたポンパンさんと神田君たちは、その別れの日、ある約束をしていたのだった。ポンパンさんの家で作った一瓶の焼酎を封印し、「12年後に再会したらこれをあけて飲みかわしましょう」とラベルに名前を刻んだのだ。確かにラベルには、1994年10月20日封、2006年10月開栓とある。つまりこれはアルコール度のかなり高いタイムカプセルである。


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これが15年物の焼酎



この心温まるはからいにすっかり感動した私たちは、一口ずつ、時の流れをかみしめるように、その15年物の焼酎をまわし飲みした。それは酒の苦手な私にさえわかるほど、まろやかで深い味がした。涙もろくなった畑先生はまもなく酔っ払って高さ20センチの椅子から転げ落ちた。

歴史的な想像力をもてる精神というのは、教育と文化の産物である。

 タイの人たちの多くは、よくも悪しくもまだ「現在」という桎梏の中に生きている。不確かな未来の感動や幸福よりも、今ことのときの快楽と充実を信じる。宵越しの金はもたないし、貯蓄にも熱心ではない。(もちろんそうでない人もいるが)数年後の未来さえを信じていない。今日の1万バーツと3年後の3万バーツ、好きなほうをあげるからどちらか選べと聞かれたら10人中9人は「今日の1万バーツ」を希望するだろう。そんな中にあって12年後に再会して酒を酌み交わそうなどという粋な心というか、人生における長いスパンの時間感覚をもっていたポンパンさんというのは、かなりすごいのではないかと思う。

 さくら寮の子どもたちも、せめて10年後の自分の姿を想像しながら、勉学に励んでほしいものだ。

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モン族の村で調査をする日本の学生たち

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まとめteみた.【14年ものの酔い】
9月末、サブプライム問題とリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した国際金融市場の混乱と世界恐慌寸前のはありがいたい話じゃないかなどと内心ほくそえんだのは、経済に疎い素人の
[2012/04/28 19:12] まとめwoネタ速suru
プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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