さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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入試戦線異状あり

2008/03/23 18:07 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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 卒業、そして進級、進学のシーズンである。

 さくら寮では今年、中学、高校、専門学校、大学などあわせて36名の寮生がそれぞれの学校を卒業した。このうち寮に残って進学するのは約半分で、残り半分は就職したり、村に帰ったり、寮を出て自力での勉学継続の道を切り開く。

さて、ひとくちに卒業というが、大変なことである。以前にも書いたように、山地民の少女たちには、「15歳の壁」がある。村にいればたいてい15、6歳で結婚してしまうのだ。恋愛活動のスタートはもっと早い。

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寮内の「卒業生を送る会」で涙のスピーチをする卒寮生。

さくら寮の女の子たちだって、男がほっておかない。寮の門を一歩出れば、次の曲がり角の向こうで、買ったばかりのバイクを村から転がしてきた同族の男たちが、ポマードで塗り固めたヘヤ・スタイルで決めて、狼のように飢えた眼をぎらつかせて待っている。そこで愛と性の泥沼にはまりこめば、結婚、妊娠、退学、退寮(順序はケースバイケース)というお決まりのコースが待っている。

さくら寮の生活といえば、一部屋5人から10人のタコ部屋で、朝は5時起きで炊事に掃除当番、水シャワーに手洗いの洗濯、きっちりと時間が決められた三度三度のご飯はおかず一品かせいぜい2品、門限は夜の7時半、外泊はもちろん禁止、携帯電話や電化製品の使用は禁止、という厳しい規則に縛られている。しかも寮父は一般のタイ人の理解を超えたヘンテコな精神主義を唱える やっかいな日本人のおっさんときている。

こうして恋愛と性欲の誘惑に打ち勝ち、軍隊のような管理生活に耐え、修道女か禅僧のごとき清廉な生活を3年なり9年なり続けての卒業なのだから、そりゃもう、誰にでもできることではない偉業である。

 ふだんこのコラムで寮生たちをけなしまくっている私であるが、なにはともあれ卒業までたどり着いた生徒たちの忍耐力だけは、ほめてやりたいと思う。集団生活が大の苦手だった私が、もし中学時代にさくら寮に入れられたりしたら、間違いなく2日以内に脱走しているだろう。

 さて、さくら寮の場合、中学を卒業する寮生のほぼ3分の2は進学を希望し、中学時代、大きな問題を起こさずがんばった寮生に対してはそのまま支援を継続している。

ところが、今年は少し異変が起こった。数名の寮生が、3月も末になって「行くところがない」といって泣きついてきたのだ。

ある女子生徒は、ある公立の職業訓練専門学校の入試に落ちてしまった。食品・栄養学科入学が希望だったのだが、内申書と面接の審査で落とされたのだ。「ほかに行く学校がない」と悲観して、女子生徒は泣いて村に帰ってしまった。

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寮内「卒業生を送る会」での出し物より。

この職業専門学校、ちょっと前まではそれほど人気もなく、特に食品・栄養学科などはいつも定員割れ状態、誰でも無試験で入れるような学科だったはず。普通高校の受験の滑り止め、最後の落ち着き先とさえ言われていたこの公立の職業専門学校に、そもそも試験や選抜審査があるとは、実は私自身も思っていなかった。

しかし、どうも最近は事情が変わってきたらしい。タイの経済発展にともない、かつては中学卒業後、手に職をつけるために職業専門学校に進学していた都市部の子女の多くが、大学進学を前提に普通高校へ進学するようになった。ホワイトカラー志向が顕著になったのである。代わって10年ほど前から、職業専門学校は徐々に山地民の子女たちで占められるようになった。これまでタイ族が担っていたブルーカラーの層に空きができ、それを山地民が補填するようになったのだ。ここ数年、チェンラーイの職業専門学校における山地民の比率はどんどん上昇し、洋裁・被服科のように80%以上という学科も出てきた。

それでもこれまでは山地民の進学率自体が低かったので、たいていの学科は無試験で入れたのだが、その山岳民族の進学率がここ数年で急速に上がってきたため、職業専門学校の枠が絶対的に足りなくなっているというのが最近の状況のようだ。経理学科などは競争率数倍の狭き門だという。

さくら寮でも、大学進学を想定して普通高校に進学を希望する寮生が増えてきた。

チェンラーイ県内で有名な進学校といえば、公立のS高校とD高校である。さくら寮生たちの多くもこれらの学校を受験するが、この2校は、さくら寮生の通うU中学でいえばトップクラスの秀才でない限りまず受かる見込みはない。

一般的に山地民の子供たちは町の子と違って塾にも通っていないし、家庭教師をつけるような経済的余裕もない。といって独学の方法も知らない。さくら寮生を見ていても、テレビやラジオの受験講座を聞いている様子もないし、ねじり鉢巻して深夜まで勉強している姿も見かけない。なのに、寮生たちは、もしかしたら受かるのではないかと根拠のない期待を抱いているようなふしがある。自信ありげというよりは、楽観視しているにすぎない。もちろんタイにも統一模擬試験のようなものものがあって、ちゃんと調べれば、自分が受けようとしている学校の偏差値がどのぐらいで、競争率はどのぐらいかというデータから、合格の可能性を認識できるはずなのだが、そういうことはしない。ライバルの実力も知らないのである。

要するにさくら寮の子供たちは、まだよく世間を知らないというか、受験競争の厳しさの実態をわかっていないようなのだ。受験うんぬん以前に、入学願書の受け受けの締め切り日すら知らなかったために、願書を受け付けてもらえなかったという寮生さえいる。寮でもインターネットぐらい使えるのだから、そのぐらい自分で調べればわかりそうなものだが、まあ、自分の将来の問題に対する切実さが足りないというか、はっきり言えば甘ちゃんの部分がある。

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寮内「卒業生を送る会」での出し物より。

私はもともと学歴無用論者であるし、受験戦争を勝ち抜いた生徒だけが優秀な人間だとはまったく思わない。しかし、寮生たちのこの情報収集能力のなさ、世間知らずぶりは、社会に出たときに間違いなく出鼻から出遅れ、致命的な差をつけられてしまうに違いないなと思う。そうやってオタオタしている間に、結局は社会の底辺であえぎ、搾取されるばかりの存在に甘んじてしまうのではないかと、心配になる。おっとりしているのは彼らのいいところだが、厳しい現実社会の中で、たくましく闘い、生きていく力だけはなんとかつけてもらいたいと思っている。がんばれ、寮生たちよ! 

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中学の卒業式に出席したさくら寮生たち。

 

 

 

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まとめteみた.【入試戦線異状あり】
卒業、そして進級、進学のシーズンである。さくら寮では今年、中学、高校、専門学校、大学などあわせて校を卒業した。このうち寮に残って進学するのは約半分で、残り半分は就職した...
[2012/04/28 18:26] まとめwoネタ速suru
プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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