さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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こそ泥捕物帳

2008/08/28 16:04 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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ある金曜日の夜。夜の9時半ごろ、電話が鳴った。さくらエコホームの寮母のニラー(歳は30代後半、二児の母)からだ。この時間にニラーが電話をかけてくるときは、いつも声のトーンが半オクターブほど上がっていて、たいてい寮内でよからぬ事件が勃発したものと相場が決まっており、しかし駆けつけてみるとそれほどパニックをおこすほどの事件でもなかったということが多いのだが、今夜はいつもにもましてニラーの口調が切迫しており、いくぶん声が震えている 。

「大変! 今、エコホームに泥棒が入って、私のフェーン(恋人)が捕まえたの」という。ニラーの彼氏はコンムアン(平地タイ族)の出身で、現役の軍人である。この夜は非番でたまたま泊まりにきていたのだ。最初に飼い犬のジローがただならぬ声で吠え、ニラーが不審な闖入者を発見。スタッフ用トイレ裏手の物干しにかけてあった寮生たちのジャージや服を奪って逃げようとしていた。ニラーの彼氏が男を追いかけながら、大声で「泥棒だ」と寮の年長の男子生徒たちを呼んで加勢を頼み、子供達も一緒になって格闘し、みなで取り押さえて縛り上げたとのことだ。子供たちもそのとき、だいぶ犯人に蹴られたり、殴られたりしたらしい。エコホームの男子生徒は年長の者でも中1、中2、よく怪我をしなかったものだ。

ニラーさんの彼氏(その風貌から私たちはチンパン君と呼んでいる)は、ふだんはただ遊びにきて数日間泊まり、寮の飯を食べて帰っていくだけの人であるが、たまには役に立つこともあるものだな。

「で、その泥棒は今どこにいるんだ」

「今もここで縛り上げて拘束しているの。暴れているけれど、逃げないように見張ってるわ。で、ピータカシ、どうすればいい」とニラー。

想像するだけでなんだかすごい状況だ。

オリエンテーション.. 
さくら寮内の進学説明会。



どうすればいいって、泥棒を捕まえたら、普通は警察に連絡するんじゃないか、というと、いや、こちらはそうではなく、村人が村内で起こした事件に関しては、まず村長に報告し、村長の裁量で、警察に通報するか、村の中で解決するかを判断するという決まりになっているのだそうだ。私たちが勝手に警察につきだすわけにはいかないらしい。そういうことなら、とりあえずそちらのしきたりに従って、そのようにしてくれと指示する。
 
この泥棒は、カレン族の24歳、無職の男。事件当時は酒に酔っていたという。村ではよく知られた不良で、麻薬常習者でもあるらしい。これまでにも何度も寮内で衣類や物品が盗まれることがあり、他の家でも泥棒の被害があって、この男が疑われていたのだが、現行犯で捕まったのはこれが初めてとのことだ。比較的新しめのジャージなどを選んでバッグにつめていたことから、変質者や下着ドロというわけでなく、金に困って衣類を盗み、売り払うつもりだったのだろうとニラー。古着でも売れるものなのか。結局、この夜は、男を村長に引き渡し、村長が警察に通報することを決断したため、男は警察官に連行されていった。

翌日、ニラーはメーヤオ郡の警察に出向いて詳しい状況を説明した。その後、男は警察による余罪の追及で、これまでのさまざまな盗難事件などについても犯行を自供したため、身柄送検され、実刑判決がくだったという。

ecohome furugi 
エコ ホームの古着配布風景。



これで事件は一件落着かと思いたいが、そうではない。スタッフたちはこの事件以降、憂鬱で、深刻そうな顔をしている。このあとに何が起こるか、不安だというのである。「報復」、「いやがらせ」「お礼参り」など、いろいろ想定しうるトラブルに気をつけないといけない。そう警告を発するのはスタッフのカンポン。村の中には犯人の親兄弟や親せきも住んでおり、男を警察に突き出したことに対して、「なにも警察沙汰にすることはなかったのに」と村長やエコホーム寮母に対して不満を抱いている者もいるらしい。

エコホームの女性スタッフたちは、夜が怖いという。スタッフ会議が開かれ、スタッフや子供たちの安全のために、さくら寮から男性スタッフが交代で寝泊まりして警備にあたることになった。

泥棒をつかまえるという正しい行いをした側が、毎日こうやっておどおどしながら生活しなればいけないなんて、なんだか納得がいかないが、ここでの現実はそうなのである。

正義が勝つのは、国家権力の庇護があるからにすぎない。タイでは法治国家というのはまだまだ理念にすぎない。正義とか倫理とか関係なく、己の利害だけを物差しにして生きている人間がゴマンといるのだ。いやもちろん、タイの善良な庶民の大半は何が善で何が悪かを知っている。しかし、いつも「正義」と「身の安全」を天秤にかけ、命がけの正義には手を出さないようにして、「ほどほどの正義感」で生きているようにみえる。

自分のほうが正しいからと、その「正義」をあまりに深追いしすぎれば、身の安全が脅かされることもあるというのは、私もタイに20年間住んで、多少は経験している。

異文化体験の少ない日本人の場合、このあたりのさじ加減を誤りがちだ。

たとえば、会社で従業員を解雇するとき、お手伝いさんを解雇するとき、恋人や妻と別れるとき(?)など、逆恨みに要注意というのはタイではよくいわれることだ。悪人を懲らしめる際にも細心の気配りが必要なのだ。

nyuryoshiken2_20120928162358.jpg 
新入寮生生選抜会
tokoya.jpg

日本から美容師のお客さんが来寮、寮生のヘアカットをしてもらった。
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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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