さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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ノーパンとポストモダン

2007/10/24 20:18 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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ちょっと前の話になるが、新聞の三面記事を読むのが毎朝の日課であるスタッフのカンポンが教えてくれた(もっとも、タイの新聞の三面記事はいきなり一面から始まる)。タイではついに女子高生や専門学校生のスカートの長さが極限まで短くなり、さらに悪いことに、パンツをはかずに通学する女子学生が増えているという。これは、ナコンシタマラートでバイク事故を起こした女子学生の多くがパンツをはいていなかったという警察のコメントが発端になったニュースで、新聞、テレビなどでもかなり話題になったのでご存知のかたもあろうと思う。そればかりか、いまどきの女子学生の中には、陰毛を赤や紫に染め(アメリカの某女性タレントの真似とか)、わざと運転者や交通巡査官に見えるように挑発するものまでいるという。まあ、文化大臣、教育大臣ならずとも、とんでもない世の中になったと良識あるタイ人が嘆くのはわかる。

さくら寮にもラジャパッド・チェンラーイ(旧チェンラーイ教育大学)で学ぶ女子大生が数人いて、寮からバイクで大学に通っているが、確かに年々スカートの丈が短くなってきているのがわかる。超ミニスカートのまま豪快にバイクにまたがってエンジンをふかしながら寮を出て行く彼女たちを見ていると、「おいおい、もうちょっと膝を閉じたほうががいいんじゃないの」ひやひやするときがある。幸い、まだパンツはちゃんとはいているようだが。

ひと昔前までは、服装のモラルの厳しいタイでは、ミニスカートすらご法度で、そういう露出度の高い服を平気で身に着けて町を歩いているのはプロフェッショナル関係の女性だけだとみなされていたものだが、それがさらにノーパン、染め毛、刺青とは。

スカートの丈の長さ程度ならまだファッションの問題ですませられるが、その背後に深刻な事情が存在するとすれば、タイの若者たちの意識や道徳観、それにともなう行動や生活様式がここ
10年ほどの間に恐るべきスピードで変化してしまったことだろう。

パソコン、インターネット、携帯電話が爆発的に普及し、コミュニケーションのありかたは革命的に変わった。経済発展、情報文化のグローバル化、高度消費社会の成熟の果てにある、単に記号的な差異だけに感応し、欲望し、その対象が横滑りしていくだけの社会。依拠すべき共同体や歴史観、いわばイデオロギーも大きな「物語」も共有できない「ポストモダン」世代が、タイにも都市部を中心にして登場し始めた。

テレクラ、援助交際、ブルセラ女子高生といった、日本で1980年以降爆発的な広がりを見せた現象が、タイでも20年ほど遅れて現実のものになりつつある。現にチェンラーイの某専門学校(多くの山岳民族の少女たちも通っている)の女子学生はそのほぼ100%が恋人もしくはステディな関係にある異性の支援者をもち、自分が援交している相手から月々いくらお手当てをもらっているか、その額を自慢しあうといった風潮さえあるという。相手を見つけるツールはやはり携帯、メール、チャット、友人の紹介…。

性も恋愛でさえもただ消費され、あらゆる価値観が相対化され、絶対的な意味を剥奪された社会では、ましてやキリスト教文化圏のように内なる倫理規範の縛りがない社会においては、「それのどこが悪いの」という問いに対して、誰も自信に満ちた明快な答えを出せなくなっている。

幸いにして、さくら寮では、門限破りやヘアスタイル違反、隠れて携帯電話を使用する程度のことはあっても、まだ売春、麻薬、夜遊び、自傷行為などの問題行動には走る子はいない。が、町の学校に通う寮生たちは、クラスメートとの交友関係から常にそうした誘惑と隣り合わせにある。「あの子がやっているなら私も・・・」となる。対岸の火事と言ってはいられない。火の粉は隣の家の軒先まで降りかかっているというのが実感だ。

ならばそんな危うい環境で子どもたちを学ばすのはやめて、みな山に帰してしまったらいいじゃないか。そのほうが子供たちの将来のためには幸せではないか、という意見があるが、それほど簡単な話でもない。帰属すべき山の共同体はかつてのような強度を失い、もうすでにほとんど崩壊しかかっているところもある。これから、住民の自発的な意思で山の村がかつてのような共同体を再構築していくことは困難で、もしそれが新しい形で可能であるとすれば、高い教育を受けた人が村に回帰してその知的リソースをフィードバックさせる以外にないのだ。

先日、日本に帰国したおり、支援者を対象にした毎年恒例の活動報告会があった。このところ私はそこでお話をするのが、憂鬱になりつつある。支援をあおぐために山の子供たちが素朴で純粋無垢な、心優しい子どもたちという愛すべきイメージをある程度アピールしつつも、一方で、情報開示という立場から、生々しい現場の現実を語らなければならないというジレンマからくる憂鬱である。支援者の共感を得、運営を経済的に安定して継続していくためには、従来型のステレオタイプなイメージだけを開示しているほうが無難なのだろうが、ある程度真実を知らせていかないと、支援者と現場の認識のギャップは広がるばかりで、結局それはいつか支援者を失望させることになる。

というわけで、冒頭のような話を報告会で紹介してきたのだが、やはり口をあんぐりあけておられるかたもあった。当然かもしれない。

 

cheer.jpg

さくら寮ちびっこチアリーダー。こんなミニスカートならかわいいのですが・・・。

 

 

そういうニュースを聞くと、さくら寮の女の子たちはみなちゃんとパンツをはいているかどうか少し不安になるが、こちらの生徒たちはスカートの下にパンツどころか、そのままセパタクローをしたり、いたずらな悪ガキにいきなりスカートをまくり上げられても平気なように(?)ぶ厚い短パンを重ね穿きしているほどなので、今のところは心配には及ばないようだ。ではノーパン・ファッションは、数年前に世間を震撼させた「サムライ・ギャング」のようないっときの都市伝説かと思いきや、そうでもなく、都市の若者の一部では実際にはやっているらしい。

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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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