さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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最終回の話

2006/08/25 16:47 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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今回は最終回の話である。

さくら寮では、週のうちに金曜日と土曜日のみテレビを見せている。テレビの見すぎは人間を確実にバカにするから、このぐらいがちょうどよいのである。

タイの人気連続テレビドラマは、たとえば金曜、土曜、日曜と1週間に3夜連続で放映されることが多い。その場合は最終回が日曜日にあたる。が、さくら寮では日曜日は寮の規則により、終日テレビ禁止である。すると、寮生たちは「今週の日曜日は○○の最終回だから、今週だけ特別に見せてほしい」と手を合わせて拝みこむように直訴してくる。ふだんあまり熱心に見ていないドラマでも、最終回だけはなんとしても見たいというのだ。

「だけど連続ドラマなんて、毎回続けて見て面白いもんなのに、突然最終回だけ見てどーすんだよ」と茶々を入れると、子ども達は「ストーリーは新聞のテレビ欄で読んで知ってるから(どのみちそんなに複雑なストーリーでもないのだが)最後がどんな結末を迎えるか知りたいんです」という。(ならば最後結末も新聞であらすじだけ読んだらいいじゃないかってもんだが)。

ところで、さくら寮では、テレビドラマのかわりに映画を見せることもある。先日、レンタルビデオ屋でチャン・イーモウ監督の『至福の時』という中国映画のVCDを借りてきて見せた。仕事も金も女もないしがない中年男が、ひょんなことから盲目の少女の世話をするはめになり、真心に満ちた友人たちに助けられながら、その虐げられた人生を歩んできた少女を救っていくというなかなか心温まるお話である。

上映が終わってから、寮生たちは開口一番、「これでこの映画は本当に終わったのか。ディスク3(VCDの映画の多くは録画時間の関係上、通常2枚のディスクに分かれており、長いものはまれに3枚組のものもある)があるのではないか」と訝しげに私に尋ねた。映画は、ある日、ヒロインの少女が、献身的に世話をしてくれたやさしい中年のおじさんたちのもとを去り、あてのない旅に出かけるところで終わる。別に普通じゃないか。が、その終わり方が寮の子どもたちにはなぜか中途半端で、納得がいかないらしい。

この映画に限らず、私がレンタルショップで苦労して探して借りてくる名画を見せると、寮生たちはその終わり方が唐突だったり、不条理だったり、意味不明といった印象をうけるようである。

しかし私にいわせれば、そもそも含蓄のある映画のエンディングというものは、みる者の意表をつくような唐突なものが多いのだ。このあとの展開は各自想像してくださいという視聴者に考えさせる「余地」を残している映画、それがよい映画というものだ。そしてよい映画をみ終わった直後、私たちはしばし席を立つことができない。クレジット・タイ
トルを眺めながら、金縛りにあったように客席に座ったまま感動に浸ったり、作品の意味を考えたりする。

しかし寮生たちは違う。クレジット・タイトルの最初の一行目がスクロールし始めた瞬間、ブッとおならをして席を立ち、BGMさえにも浸らずに、トイレに行ったり、歯磨きをしたりしてとっとと眠りにつく。そして翌日には昨夜の映画のことなどすっかり忘れているのだ。そしておそらく永遠に思い出すこともない。

私は子ども達のその様子を見ていて膝を打った。寮生たちがドラマの最終回が好きなわけが判ったのである。

タイのドラマではたいてい、最終回ですべてがハッピーエンドに終わる。すれ違っていた恋人同士の誤解は解け、親子の憎しみは水に流れ、ヒロインをいじめていた意地悪ババアは悔い改め、すべての問題は氷解してハッピーエンドの大団円のもとに終結するのである。つまりそのあとのことを何ももう心配したりする必要がなく、安心して眠りにつけるような、めでたし、めでたしの状態でドラマは終わるのである。これは言葉を変えていえば、想像力の余地を残さない終わり方なのである。これじゃあ、これじゃあ、子ども達のイマジネーションの力は養われないわな。

で、生徒ミーティングのとき、私は子ども達に話した。

「私たちの人生はタイのドラマのようにハッピーエンドで終わるわけじゃないだろう。ドラマはそれで終わるかもしれないけれど、僕たち一人一人の人生のドラマは、ドラマと違ってこれからもだらだらと続くんだ。本当に終わるときは死ぬときだけだ。今日幸せな人も明日は不幸のどん底に落ちるかもしれないし、今日つきに見放されていた人も明日には幸運が訪れるかもしれない。キミたちがドラマを見るときも、最終回のその続きのヒロインたちの人生を想像してみるように!」

そうは言っても、子ども達は今日もハッピーなドラマの最終回を待ち焦がれつづけているのである。

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8月に行われた寮内スポーツ大会の様子。これは日本人の方から指導を受けた「オムニキン」というゲーム。

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寮内スポーツ大会の様子
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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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