さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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拝啓15の私から

2010/06/29 00:04 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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昨年6月のある日、アンジェラ・アキさんの『手紙―拝啓十五の君に』という曲を寮の子どもたちに教えた。たくさんの子どもたちがそのメロディと歌の内容にとても感動し、自分自身の未来の自分に向けて、手紙を書いた。その中から何通かを紹介したい。 



chao6.jpg 
完成した新寄宿舎「しみず館」の食堂。


 まずは、中学3年生のアカ族女子が、30歳の自分にあてて書いた手紙。

「こんにちは、14歳の私です。あなたは30歳になりましたね。もう家族はできましたか? 幸せにすごしていますか? 

私は寮で友だちと楽しくすごしながら、勉強に励んでいるのでとても幸せですよ。学校で出される宿題が多かったり、むずかしかったり、それ以外にもろいろと困難なことに出くわすけど、なんとか自分自身で解決できています。

今、あなたは自由で幸せですか? どんな大人になりましたか? 今の私のように、やりたいことがあっても、面倒くさくてやりとげることができなかったり、愚痴をこぼしたり言い訳ばかりしているようなことはないんでしょうね。

あなたが思うに、私にとって人生で一番よかった時期はいつですか? ぜひ教えてください。

私には将来薬剤師になりたいという夢があります。あなたは今、薬剤師の仕事をしているのでしょうか? 私が望んでいたような人生を歩んでいるのでしょうか? 

私は現在のことや将来のことを考えるととめどもなく悩んでしまいます。あまりにもあれこれ考えすぎて、気力もなくなり落ち込んでしまう日さえあります。

私たちの人生はそれほど長いものではありません。愛する人、そして愛してくれる人と一緒に価値のある人生を送らなければならないと思っています。

30歳のあなたはすでに家族をもっていると思いますが、あなたはどんな男性と結婚したのですか? 今、私が思っている男性とですか? 子どもの頃は、好きになった男性とは一緒になれると思っていましたが、14歳の私の頭の中にはすでにこんな馬鹿な考えはありません。

私たちはこの世に生まれてきた以上、健康で価値のある人生を送るべきだと思います。価値があるといっても、お金持ちであるとか、美人であるとか、長生きするということではなく、私と一緒にいる周りの人たちにも幸せになってもらうことが、私たちにとって価値ある人生だといえるのではないでしょうか。

山地民の子どもたちは学がないと馬鹿にされたり、社会的に低く見られることをぜひやめさせたいとも思っています。私たち山地民の多くは粗末な家に住み、土にまみれて農業をしていますが、これからは山地民の人たちには便利で快適な生活を送ってほしいです。私が大人になったときにこのような願いがかなえられているのでしょうか?

他にももっといっぱい話したいことがありますが、このへんで終わりにしますね。あなたの人生が幸せいっぱいであり、素敵な未来が築けますように」

chao6,24-2 
しみず館のドミトリーで


 続いて高校3年のラフ族女子の手紙。

「こんにちは。30歳の私。いかがおすごしですか? 元気でやっていますか?

もう結婚はしましたか? まだ独身だなんて言ってほしくないですよ。でもあせって変な相手を見つけないよう気をつけてね(熟慮して相手を決めてね)。

今、どのような仕事をしていますか? もうすぐ私は卒業後の進路を決めなければいけませんが、できることなら航空会社の客室乗務員になるための勉強をしたいと考えています。30歳の私は飛行機の客室乗務員になっているのでしょうか?

知ってますか、私は高校3年生の学年中で4番目、クラスで2番目の成績をとったんですよ。うれしく思ってくれますか?(きっと喜んでくれていることと思います)

18歳になる私が一緒にすごしている家族は経済的に大変です。両親も年をとりはじめ、下の妹たちは大きくなりつつあります。そのため、いろいろと悩んでしまうこともあります。30歳の私はきっと私の両親を楽にさせ、下の妹たちを大学まで勉強するために支援していると思います。

30歳の「私」は、なぜ私が自分自身の恋愛について書いていないのかと思うことでしょうね。私にはそのうちきっといい人が現れて、一生に人生を歩んでいることを信じています。でも、私は恋愛をすると男性に騙されるのではないかと恐れているので、今は積極的に恋愛をしようとは考えていません。30歳の「私」はこのような考えであり続けていますか(あなたがもし独身なら)? それとも、恋愛に対しての考え方は変りましたか? 30歳の私の恋愛観がどうなっているのか教えてくださいね。

18歳になる私にはまだ確実なものは何もありません。将来どうなるのか、はたまた明日はどうなるのかさえ、確信をもって言うことができません。そのため、自分自身の目標を見失ってしまうこともあります。でも、私は私の夢に向かって頑張って勉強しますね。いつの日にか私の夢がかなう日がくると思っていますので。

 最後になりましたが、30歳の私が幸せでありますように願っています。もし、何か問題が起こったら心を開いて親しい人に相談してくださいね。そして、両親のことと(もしあれば)家族のことはきちんと面倒を見てくださいね。

それと、学生時代の友だちとまだ連絡をとっているかどうかわかりませんが、友だちのところにも遊びに行ってね。もし、夫がいればお互い理解のある仲のいい夫婦でいてください。もし、子どもがいるなら、子どもを大切に育ててくださいね。そして、あまり怒らないでくださいね(怒ってばかりいると老けますよ)。問題にぶつかっても、くじけないでくださいね。

私は30歳の私がどんな困難をも乗り越え、信じていることが達成でき、素晴らしい人生を歩めるように応援していますよ。30歳になった私はいろいろと変ってしまっていて、失ってしまったものもたくさんあるかと思いますが、30歳になったときも私が恋しく思っている人たちが、過去のような厳しい生活状況に戻らず、元気で素敵な生活を送っていることを願っています。私たちの人生は新しいことを始めるのに遅いということはありませんので、頑張りましょう」(18歳の私より)

上のふたりの手紙にも見受けられることだが、年上の自分に書いているにしては、内容や口調が妙に「上から目線」の説教調になっているのが気になるかもしれない。しかし、私にはこの「背伸び」が意外とすんなりくる。

タイの社会状況や文化、価値観の急激な変貌のさなかにあって、子どもたちは歳を重ねるにつれて退行していく部分がある。私が見る限り、多くの子どもたちが、親や先生の言うこと(つまりタテマエである)を素直に聞く小中学校ぐらいの年齢のときが、一番まっとうで立派な考え方をもっている。倫理的には子どもが人生のピークにいるわけである。高校、大学と進むにつれて、多くの子どもが、その人間性を成長させるどころか、劣化の一途をたどり、汚職やごまかしなど、自己保身のことしか考えないこずるい大人になっていたりする。「これまで受けてきた教育の成果とはいったいなんだったのか」とがっかりさせられることも少なくない。

そんなわけで、15歳の子どもたちには、世俗の垢にまみれてまっとうさを失ってしまった未来の自分に向けて、どんどん「喝!」を入れてほしいと思っている。

オリエンテーション..
卒業予定者の進路指導

 
最後は専門学校上級課程のラフ族男子からの手紙である。

「こんにちは。 私があなたにこの手紙を書いてから20年たちましたが、いかがおすごしですか? 元気ですごしていますか?

今、あなたは40歳になったのですよね。仕事の方はどうですか? 今頃は、夢だったソニーのテレビ製造の責任者になることができたはずなので、とてもうれしいですよ。

ソニーの製造責任者ともなると仕事の方はきっと大変で、疲れているはずですが、一生懸命頑張って仕事に励んでくださいね。もしかしたら、もう少しすると社長になれるかもしれませんね。あと何年すればあなたの会社を持つことができそうですか? 長い間会社員として働いているから、自分の会社を持ちたい気持ちは強くなっているはずです。

ところで、あなたはすでに家族をもっていますか? きっときれいなお嫁さんをもらっているかと思いますが、もしかするとまだ恋人もいなくて、オカマになっているかもしれませんね(冗談ですが)。

あなたは何歳のときに結婚したのですか? 今、子どもは何人いますか? あなたの奥さんはどこで仕事をしていますか? あなたと同じ職場ですか? 奥さんはどこの村の人ですか? 色白でスタイルはいいですか? あなた自身の家は建てましたか? それとも誰か他の人の家で一緒に生活していますか? 自家用車は持っていますか? そして、子どものときからほしかった物はすべて手に入れることはできましたか? 暖かな家庭を築いていますか? 人生でまだ足りない物は何かありますか? 今のあなたは幸せですか? 

いずれにせよ、あなたが家族と幸せにすごすことができ、仕事の方も順調にいき、そして、健康で、長生きできますように。

この手紙を書いている現在、地球は汚染されていて、その結果、世界各地で異常気象が見られます。それ以外にも地球ではいろいろなことが起こっていますが、あなたも気をつけてすごしてくださいね。そして、お金持ちで、有名人にもなれますように」

ところが実はこの男の子、この手紙を書いた数ヵ月後、寮内での度重なる飲酒などが発覚して退寮になってしまい、結局学校も中退してしまった。20年先の夢を思い描くことができても、半年後の自らの体たらくは予想できなかったらしい。20年後にこの手紙を読んだらどう思うだろうか。

この男の子に限らず、寮の多くの子どもたちは、漠然とした夢を抱くことはあっても、その夢の実現に向けて長期的なビジョンをもち、着実に行動していくということが苦手なようである。

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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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