さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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自立への苦闘

2009/03/28 19:25 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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himawari_R.jpg  
さくらで育てたひまわり畑。


 金融危機以後の長引く景気の低迷。先の見えない時代にあって、私たちNGO組織の未来はけっして安泰ではない。これからは無償の支援に頼るだけのでなく、自助努力の道を模索していかなくてはならない。

 というわけで、さくらプロジェクトでも子どもたち自身の手でできる自立への方策をいろいろ考えはじめた。そのひとつが、それぞれの民族伝統の刺繍やパッチワークの技術を生かした民芸品(ちょっとした財布や小物入れ)の製作と販売なのだが、日本のNGO関係のバザールや支援者のかた対象の会合などではとても評判がよく、確実に売れる。しかし、それは自分が支援している里子が作ったという思い入れとこれを買ってあげればその子のお小遣になるという、顔の見える関係で成立する付加価値商品のようなもので(これはこれで意味のあることだが)、一個の商品としてシビアにみた場合、まだまだ技術は未熟だし、糸のほつれや布の汚れなどもあり、価格的にも一般市場で競争力をもてるような代物ではない。

 なにかもっと骨太で持続可能な、まあ早く言えば、手堅いお金儲けの手段はないかと思案していたところ、2年前、山岳民族の調査の関係で知り合った大阪のK女子大の栄養学のH先生(女性)が、「タイの高地では梅がとれると聞いてます。この梅を加工して梅肉エキスっていうのを子どもたちで作ってもらって、日本で売ってみたらどうでっしゃろ」とアドバイスしてくださった。

梅肉エキスというのは、生の青梅をスライスし、ジューサーなどで液状にしたものを鍋で弱火で数時間かけて煮詰めたあとに残った、こげ茶色の、舐めると超すっぱいドロドロの液体である。梅干や梅酢以上に強力な殺菌作用があり、内服すれば食あたりや下痢、便秘、のどの痛みに有効で、塗れば水虫、タムシ、神経痛、腰痛、肩こりなどにも効くという。ただ、1キロの生梅からたった30~40グラム程度のエキスしか抽出できず、手作業による部分が大きいので、日本では健康食品としてかなりの高価で売られているという。 コストの安いタイの梅と人手を使えば価格でも十分対抗できるのではというのがH先生の目論見である。

ではやってみましょう、と安請け合いしたものの、私自身もタイのスタッフも、梅肉エキスなどというもの見たことも触ったこともない。それを雑誌の切り抜きのレシピだけを頼りに見よう見まねで作ってしまった。

梅の実の仕入先は、チェンラーイ北部、約1300メートルの高地にあるドイ・メーサロンことサンティキリー村。ここも換金作物として梅の栽培に乗り出したのはいいけれど、年によっては買い手がつかず、大半は棄ててしまうこともあるというような状態だった。梅肉エキスが製品として成功すれば、高地に住む山岳民族の人々の生活向上にもつながるというわけだ。

 3月の半ば、ちょうど学期休みで暇になった寮生たちが集まってくれて、さくら寮のホールは数日間、梅エキス工場と化した。できあがった製品は本当にこれが梅エキスなるものかどうかさえも怪しいままに日本に送ったのだが、H教授からは、一応合格点が与えられた。できたものはH先生が買い取ってくださったので、子どもたちにとってはいいお小遣い稼ぎになった。

 しかしこの梅肉エキスを作るには、新鮮な青梅は使わねばならないので、収獲後、梅が黄色く熟してしまうまでの2日間の間にすばやく作らねばならないことである。しかも梅の収穫の最盛期は3月半ばのほんの10日間ぐらいに集中している。つまり毎年この時期以外に梅エキス製造の機会はなく、寮生にとっては1年に10日間ほどの短期アルバイトにしかならない。そこが難点だった。

そんなところにまた大阪のH教授から「ほなら、ひまわりの種ってのはどうでっかー」と提案があった。ひまわりの実から採れる油は、今、バイオ燃料の原料として世界的に注目を集めているとのこと。

 「ひ、ひまわりですか。うーん…」と私は首をひねった。チェンラーイ近郊で観光用に栽培されているひまわり畑を見に行ったことがあるが、タイのひまわりの花は日本のそれのように洗面器のような巨大なものはなくて、ダリアの花に毛が生えた程度のミニサイズである。こんな小さなひまわりから油がとれるものだろうか。あまり乗り気ではなかったが、「いえ、一年目はこちらで経費を全部出しますから、試験的にやってみましょ。軌道に乗ればビジネスになりまっせー」というH教授の言葉にあおられ(?)、コーヒー栽培でも有名なドイ・チャーン(標高約1500メートル)の近くにあるスタッフの実家の畑を頼み込んでお借りし、1ライ(1ライは1600平米)ほどのひまわりを植えた。約3ヶ月でとりあえず無事に花は咲いた。ここまでは順調だった。

 花が枯れて、そろそろ収穫の時期がやってきた。12月のある日、私たちはいさんで畑に出向いた。そして眼前の光景にわが目を疑い、そして呆然とした。なんと、ひまわりの実という実が忽然と消えてしまっている。

 近くの森に住むサルの群れが、夜の間に収穫直前の種を全部食べていってしまったのだった。このあたりの森には野生のサルが住んでいて、よくトマト畑やトウモロコシ畑なども荒らされているという。この憎き山ザルども、来年はひまわりの種をトラップにして、片っぱしから一匹残らず捕獲して食肉にしてやる、と毒づいたところで、あとの祭りである。

 結局、肥料や除草剤、人件費などに数千バーツを投下した挙句、仕入れた種3キロに対し、収穫できた実は1ライでたったの2キロというトホホな結果であった。これじゃあ、実用化どころか、作れば作るほど大赤字である。自立への道は遠い。

umaekisu_R.jpg 
さくら寮での梅エキスづくり。
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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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