さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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ザ・ゲーム

2008/01/23 19:19 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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12月4日夜のこと。スタッフ会議が終わって部屋でくつろいでいると、スタッフのミボヤイから電話があり、「男子寮生3人が寮からいなくなった。そちら(白百合寮)でも寮生がいなくなっていないか調べてくれないか」という。点呼すると、専門学校に通うブチュという女の子がいなくなっている。

先週に引き続いて、また脱走者か!

しばらくしてカンポンからも電話があった。深刻そうな口調である。

「ピータカシ、一度に4人もの寮生が集団で無断外出するっていうのは、異常事態です。すぐにホールで緊急生徒集会を開きましょう」

「えっ、でももう夜の9時半だぜ。もう寝入っちゃっている子もいるし・・・。まずはスタッフだけでその辺を探したほうがいいんじゃないのか」

「いえ、その前に寮生を集めて情報を収集しましょう。まずはホールに全員を集合させてください」

「う、うん、わかった」

Xmas5.jpg

  さくらホールでの集会



どうもなにか変だなあと思いながらも、全員を階下に召集した。目をこすりこすり起きてくる子もいた。

ホールではすでにすみれ寮、ひまわり寮の寮生たちが集合し、カンポンが子供たちになにか説教している。全員、おしだまったままだ。

そこへなんと、当のブチュが帰ってきた。カンポンが怖い目でブチュを見据える。

「どこへいってたんだ。こんな時間に」

ブチュはカンポンの目も見ず、ふてくされてたっている。

しばらくして、デッスリチャイ、アド、フアの男子3人も相次いで寮に戻ってきた。おずおずと皆の座っているホールに正面から入ってきた3人の前にカンポンが歩み寄る。

「こんな夜遅くに、どこでなにをしてた。ん? 酒を飲んでるな。顔が赤いぞ。酒を飲んできただろう。お前ら、ちょっと事務所に入るんだ」

カンポンが激しい口調で怒鳴る。その勢いに押されるように、デッスリチャイたちはのろのろと私の前をすりぬけて事務所に入っていった。そのとき、フアがホールの柱にぶつかってよろけた。寮生たちから笑いがもれる。

「静かに! 笑ってる場合じゃない!」

と今度は私が叫ぶ。

フアは完全に千鳥足である。酒を飲んでる? でも、なんか、くさいなあ。いや、息ではなくて、演技が。

ここへきて、私は完全に気づいていたのだ。これはお芝居である。しくまれた「ゲーム」である。私をまんまとかついだ挙句に、最後は顔をほころばせて花束とかケーキかなんか持ってくるんだろうな。明日はプミポン国王の誕生日、つまりタイでは父の日なのである。スタッフや寮生たちは毎年、この「父の日」のイベントとして、こうして私を担いで驚かせたあと、一転して喜ばせるという、単純なパフォーマンスをやってくれるのである。しかし毎年125日当日の朝では、あまりにもバレバレなので、今年は私の不意をつくために、前夜に決行する計画をたてたのであろう。

実はカンポンから全員召集の電話があった時点で少しおかしいなあ、とうすうす気づいてはいた。あまりにも設定が不自然すぎるのだ。

しかし、私は彼らが最後までこの芝居を全うするまで騙されたふりをして、一緒に演技者の一団に加わることとにした。共犯者である。実験演劇の世界である。どこからどこまでが演技者でどこからどこまでが観客か不明瞭で、誰にもわからない。いつのまにか演技者になっている。事務所でカンポンとデッスリチャイが事務所で激しく言い争いをしているのが聞こえた。これまたさくら寮演劇クラブそのもののクサさである。私はパンヤー(高1の男子)に向かって命令した。

「太い棒を探してこい、やつらをひとりひとり叩いてやる」

「は、はい」

パンヤーはそう答えるがなかなか棒を探しに行こうとしない。

「けっ、なにをぐずぐずしてるんじゃーい」

私は自分で物置に走っていき、壊れた箒の柄を見つけるとそれを拾ってホールに戻り、その箒の柄でドンと一発床を叩いた。

ホール全員に緊張感が走る。私の鬼の形相を見て、子供たちの顔がびびっている。たぶん、このお芝居は一部の計画者以外には知らされていないらしくて、これが本当の事件だとまだ思い込んでいる子供もたくさんいるらしい。

しばらくすると、デッスリチャイたちがカンポンに捨て台詞をはきながら事務所から出てきて、ホールを通り抜け、外へ出ようとした。

「ちょっと待て」

私は箒の柄をもって仁王立ちし、外へ出ようとする彼らの前に立ちはだかる。箒の柄で通せんぼした。それを振り払って外を出て行こうとする3人。

「ピータカシ、落ち着いて、落ち着いて」

後を追ってきたカンポンが私の後ろから私を抱きかかえるようにして、なだめにかかる。

「いや、一発やつらの尻でも叩かないと気がすまない。放してくれ」私はカンポンを振り切って棒を振り上げながら、鋭い眼光のまま、さらにつき進んだ。

寮内からかすかな悲鳴が上がる。誰かが叫ぶ。

「タカシ兄さん、叩かないで」

まさにそのときむこうからデッスリチャイたちが、花束やプレゼントをもって微笑みながらやってくる。ここでお芝居は終了である。ここでハリウッド映画なら、もうひとつふたつ展開があって、私が勢い余ってデッスリチャイを殴り倒してしまうところだが、さすがにそこまでやると、収拾がつかなくなる。

寮生たちの前に並んでプレゼントを掲げ、私やデッスリチャイ、アド、ブチュ、カンポン、ミボヤイたちが「なーんちゃって!」と笑顔で事実を打ち明けたところで、やっとホールに安堵感が漂い、拍手が起こった。が、中にはまだきょとんとしている子もいる。寮生たちの何割かはすでにこの計画を知っていたり、途中で気づいていたが、私も演技に加わって凶器(?)を持ち出すことまでは想定外だったらしくて、かなり緊張していたらしい。

が、私も他のスタッフもまったく予期していなかったことがあった。

ウィチュダー、ボンパット、ナルポンら年少の寮生たちが、このお芝居を完全に信じ込んでしまったようで、ネタばらしが終わったあとも、しばらくの間泣きやまなかったのである。よほど怖かったのであろう。ちびっ子たちには、実に申し訳ないことをした。PTSD(心的外傷後ストレス障害)にならなければよいのだが。

Xmas6.jpg 
クリスマス会での男子の爆笑コント


Xmas7.jpg 

クリスマス会でプレゼントをゲットしてほほ笑むふたり。

 

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プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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