さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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古着配布の旅

2005/05/31 18:15 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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 本格的な雨期が始まる前に山の村々へ古着を配りに行ってきた。年に10回ほどはこうしてピックアップトラックの荷台に段ボールを山積みして、古着配りの旅に出る。

 日本の支援者の方々からさくらプロジェクト宛に送っていただいている古着の段ボールの数が、1997年8月に現在の帳簿に記録を開始して以来、通算で1000個に達しようとしている。一箱平均15キロとしてもざっと15トン、7万着以上。大変な量である。ありがたいことだ。

 送ってくださった古着は、まずスタッフの手でチェックされ、仕分けされる。寮内で配るにも山で配るにも、豹柄のミニスカートとか、毛皮のコートとか、イブニングドレスみたいなのとか、ちょっと通常の用途としては引きとり手がなさそうな派手なものは、さくら寮生製作のビデオ作品やさくら演芸会用のステージ衣装としてストックされる。こういう衣装は、いざ必要があって調達しようと思えばずいぶん高価なものなので、これはこれでなかなか重宝するのである。柔道着、白衣、軍服、ビキニの水着、ふんどし、かつら、ムエタイ用のトランクスなんてのも送られてくる。

 さて、村での古着の配り方であるが、これが難しい。私たちもこの12年間の間に様々な試行錯誤を繰り返した。

 最初の頃は、村人全員にくじを引いてもらい、1番から順に並んでもらって、古着の山の中から1着なり2着なり気に入ったものを選んでもらうという方法をとっていた。しかし、これは大きな村で人口が300人もいたりすると、くじ運の悪い人は、順番待ちをしているだけで疲れてしまう。たくさんの古着の山から数着だけを選ぶというのも、目移りがして、なかなか時間がかかるのだ。それにたまたまその日留守にしている人は、古着をもらえない。待たされた人がいらだって暴徒化する可能性もある。(というのはちょっとオーバーだが)

 そこで、最近さくらプロジェクトにおいて定着してきた配布方法は、「福袋方式」である。福袋の意味は、袋に入っていて中が見えないという意味ではなく、いいものもあれば悪いものも入っているという意味である。

 これは、まず村の世帯数を教えてもらい、村の広場にシートを敷き、その世帯数分に古着を小分けする。たとえば40世帯の村にトータルで200着の古着を配る場合、古着5着ずつを適当に40の山に振り分ける。そして、各世帯ひとりずつの代表者に1から40までの数字の書かれたくじを引いてもらい、1番を引いた人から順に好きな古着の山を選んでもっていってもらう。もちろんその4着の中には、その家庭では不要な衣類もまじっているだろうが、それは全員が選び終わったあと、各自の自由意志で他の家の人と交換してもらえばよい。200着の山から1着ずつ選ぶよりはかなりスピードアップがはかられる。

 しかし、この方法にしても、そう簡単にいくわけでもない。

 とあるひなびたラフ族の村で、40軒の代表者が全員くじを引き終わった。

「じゃ、まず1番の方から。2番、3番の人もスタンバイして整列といてくださいね。1番の方、いらっしゃいませんかぁ?」

 3分ぐらい待つが、誰も名乗り出ない。あれ、全員がくじを引いたから、誰かが1番のくじをもってるはずなんだけど。あ、くじを開いていない人いる。くじをひいたまま、ぼーっとしているのだ。

「あ、おばさん、それね、折りたたんであるから、自分で開けてみてください。中に番号書いてあるからね。1番の人、早く名乗り出て。うーん、困ったな。トイレでもいったのかな。じゃ、しょうがない2番の人、いますか?」

 1分ほど待つが、現われない。

「じゃ、3番の人いる?」

 ひとりの若い女性がニコニコしながら歩みよってきて、私にくじを見せる。

「あ、1番の方ですね? え、それとも2番? うわ、だめだめ、これ32番じゃないの。あのねえ、ギャグやってる場合じゃないんだから」

 次に別の男性が現われた。

「これも違う、これは35番でしょ」

 この人たち、この忙しいときにボケたふりしているわけではなく、はたまた、番号が大きいほど優先順位が高いとマジで思っているわけでもなく、まったく数字を読むことができなかったのだ。村では大人たちは生まれてから一度も学校へ行ったことがないという人がほとんどである。それにしても一桁と二桁ぐらい認識できても……と思うなかれ。まあ、私もタイにきた頃はタイ数字どころかタイ語の母音と子音すら区別がつかなかったのだ。タイの選挙ポスターでは、立候補者の番号や、番号のみならず、その番号分の点が入ったさいころの目のような標識が名前よりも大きく印刷されている理由がよくわかる。

 かくして、番号順に並んでもらうだけでも絶望的なまでに時間がかかってしまうのである。要領を得ないことに、「あのー、自分の番号が読めない人は、お近くの数字の読める人に読んでもらってください」(こういう場合はだいたい、多少なりとも勉強を習っている子供のほうが頼りになるのだが)と促しても、大人も子供もみなぽかんと口を開けてみているだけである。

 こっちも悠長に待っていられなくなって、「はい、次6番の方、6番いなければ、7番ね。8番、9番の人も選んでOKだから」などと、ペースをあげていく。不思議なことに、30番ぐらいまで進んでから、やっと1番の人や2番の人がどこからともなく現われる。あんた、いったい今までどこに潜んでたんだと、ツッコミをいれたくなるのをおさえつつ、「ああ、よかった。急いで選んでください」とせかす。
 それでも、こうやって整然と、1人ずつ選んでいってくれる村はまだ道徳教育がなされているといえる。ひどい村になると、途中でまったくのアノミー状態、無政府状態に陥って、番号が大きい人はもちろんのこと、すでに一度取り終わった人、番号札を持っていない人まで乱入してきて、古着の取り合いになり、最後はデパートの開店直後のバーゲンセールの主婦達のような(かなりこの表現、ステロタイプですが)ようなつかみあい、引っ張り合い、奪いあいの地獄絵図が展開するのである。

 ある村での出来事だ。

 夕方、上記のような方式で衣類を配り終わり、村長さんの家で夕食をいただいていたときだ。村でただひとり中学校を卒業している女の子が「あなたがたの車の荷台に子供たちが乗って何かしていますよ」と告げに来てくれた。私たちのトラックは村の広場にとめてあった。荷台には明日次の村で配る予定の古着の段ボールが積んであったのだ。

 薄暗い中、村の子供たち(7歳から12歳ぐらいだろうか)10人ほどが、トラックの荷台に乗りこんで、覆ってあったビニールシートを捲り上げ、段ボールの蓋を開けて物色し、われ先に衣類を奪い合っていた。

 村の大人たちはそれを見ても注意もせず、見てみぬふりをしていた。私たちは子供たちを追い払ったが、子供たちを注意する大人は誰一人いなかった。

 私はとても悲しくなった

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エイリアン

2005/05/23 18:04 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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 タイの学校も新学期が始まり、5月中旬、さくら寮の子供たちも元気に村から帰ってきた。今年のさくら寮の新入寮生は28名。5月22日(日曜日)、寮では恒例の「新入生歓迎会」が開かれた。

 会場は寮内およびさくら寮から数百メートル離れた土砂採掘場付近。先輩寮生たちが、軍隊訓練的なノリで新入寮生を整列、行進させ、約10ヶ所の通過ポイントで、寮の規則を暗誦させたり、歌わせたり、踊らせたり、泥の中を匍匐前進させたり、謎のお菓子やドリンクを飲ませたりと、あの手この手でいびりまくる手荒な通過儀礼である。タイでも大学などでは一時おふざけがエスカレートし過ぎて、日本の一気飲み同様、死者が出たりして社会問題になったこともある。さくら寮の場合はそこまでハードではない。唐辛子やガピのたっぷり入ったサンドイッチを食べさせられたりして、なかには半泣きになる子もいるが、みな泥んこになりながら、おおむねこの手荒い歓迎を楽しんでいる。


 寮では新学期そうそう、珍事件も勃発した。5月末のことである。

 男子寮生で、小学2年のアティット・ジャクー(9歳)の鼻血が止まらなくなった、と誰かが事務室へスタッフを呼びにきた。アティットは洟垂れ小僧である。

 スタッフのミボヤイがガーゼをもってアティットのところへ行った。出血の量はそれほどでもないが、鼻の中が痛いという。ミボヤイが鼻の穴を覗き込んだが、特に異状はない。鼻の穴にガーゼを突っ込んでミボヤイは帰っていった。アティットの鼻血はいったんおさまったが、しばらくするとまた出血した。鼻の中でもぞもぞ動く感じがする、何かいるようだという。虫でも入っているのか。山岳民族の住む山の村では、寝ているときにゴキブリやハエなどが耳や鼻の穴に入ってくることがある。ミボヤイがアティットを仰向けに寝かせ、鼻の中に水を流し込んだ。

「出てくる、もうすぐ出てくる」アティットはそううめいて起き上がった。血糊を含んだ黒いドロンとした何かがアティットの鼻からまさに顔を覗かせようとしていた。しかし、指で引っ張ろうとすると、それは、すぐに鼻の穴の奥にきゅるきゅると引っ込んでしまった。「なんだ、これは」みんなが驚きのあまり、のけぞった。「ふが、ふが、ふが」アティットは鼻の中がむずがゆいのか、くしゃみをしそうになっている。

「アティット、鼻で強く息を吐くんだ。思い切りくしゃみしろ」

 私はエクソシストの牧師になったような気分で、アティットに叫んだ。アティットが弱々しくくしゃみをしたが、そいつはまだ鼻の中にとどまっていた。鼻血は断続的に流れ出た。ミボヤイがクリニックへ連れていった。

 医師はアティットの鼻の中をのぞきこんでギャッと叫んだ。

「確かに何かいる!」

 エイリアンである。黒くて、粘膜質の体をしていて、伸び縮みする物体だ。

 医者が金属棒のようなものを鼻に突っ込んで、掻き出そうとしたが、出てこない。チューブで鼻から水を送りこんだが、それも効を奏しなかった。クリニックの医者は、ついにギブアップした。「くそ! 見失った。やつは、上の方へ上がってしまった」

 エイリアンは鼻腔の奥深くへと逃げてしてしまったのだ。医師は「ここじゃ無理だから」と、オーバーブルック病院へ連れて行くことを勧めた。

 オーバーブルック病院でも当直の医師たちが手かえ品変え、この吸血エイリアンと格闘したが、ダメだった。急遽、電話で耳鼻咽喉科の専門医が呼ばれ、手術室に連れられていった。ピンセットでエイリアンを引っ張り出そうとするが、敵はアティットの鼻腔の粘膜に固く吸着して、離れようとしない。無理してひっぱろうとすると、アティットはあまりの痛さに泣き叫んだ。局部麻酔がかけられた。

 1時間におよぶ大格闘のすえ、ついにエイリアンはアティットの鼻の穴から外界に出てきた。まだくねくねと動いているその不気味な物体を見て、みながのけぞった。

 それは体長10センチにもおよぶピン、すなわち蛭(ヒル)だった。

 いったい蛭はいつどこでアティットの体内に侵入したのだろうか。アティットは昨年の新入寮生で、今年の新入生歓迎会には参加していない。アティットの話では、すでに村にいる頃から鼻の中がむずむずしたりする症状があったというから、村で川遊びなどをしたときに、知らないうちに入ったのだろう。とすれば、アティットが寮に戻ったのは5月14日だから、なんと2週間もの間、蛭はアティットの鼻の中に住み着いていたということになる。いったいどれほどの血を吸われたのだろう。恐ろしい話である。

 しかし、ヒルぐらいで驚いていてはいけない。下手をすると命に関わるようなエイリアンもタイには潜んでいる。

 2年ほど前のこと、寮生で中学2年のアカ族の少女がある日突然、寮の中で気を失って倒れ、病院にかつぎこまれ、3日間入院した。最初は癲癇の発作か、女子生徒によく見られるダイエットのし過ぎから来る貧血ではないかと考えていたのだが、X線検査で脳内に影があるのがわかり、脳腫瘍の疑いもあるとのことで、精密検査してもらった。その結果、「CEREBRAL CYSTICERCOIS」(嚢尾虫症)が頭の中で成長しているためと診断された。嚢尾虫は脳に寄生する寄生虫の一種だそうで、成長すると巨大化し、脳内を圧迫して癲癇のような発作を引き起こすという。最初は脳腫瘍とも共通する症状が出る場合もある。豚の生肉などを食べるとこの寄生虫が宿るらしい。

 山の人たちは豚生肉をラープ状にして食べる習慣があるので、このような寄生虫の危険性がつねにつきまとっている。みなさん、生肉は気をつけましょう。以前、私の友人でもラフ族の村でうっかり村人に勧められるままに生肉を食べ、三日三晩、のたうちまわって苦しんだ人がいる。ソムタムに入っている生の蟹、あれもあぶないですね。

 現在、寮生のアカ族の少女は内服薬によってすでに完治し、普通に学校行っている。

1補正 


アティットの鼻の穴から出てきたヒル。引っ張ると15センチにもなった。

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新入寮生歓迎会で顔にメイクをさせられた新入寮生。いずれもラフ族で、左からスチャダー・ジャキ、オラピン・センポー(以上さくらエコホーム)、チンタパー・ジャガー、ナソー・エブ(以上さくら寮)


IMG_7975.jpg 
泥のトンネルを抜けてきたプラーニー・セイラオ(モン族、中1)

プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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