さくらプロジェクトのブログ

タイ北部チェンラーイで活動する山地民の子どもたちのための教育支援NGO「さくらプロジェクト」代表の三輪隆が綴るさくら寮での日々

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寮生日本へ行く(後)

2005/04/24 17:57 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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里親の方に着物を着せていただいたピンパーさん

さて、関東に4泊したさくら寮生、ラッポン、スリワン、ピンパー、ラダーの4名と私は、4月12日、新幹線に乗って岐阜、高山方面に向かった。これから下呂や高山の里親のお宅にホームステイするのだ。

 名古屋でJR特急ワイドビューひだ高山行きに乗り換え、車内で駅弁を食べていると、岐阜駅あたりで、Yシャツにネクタイ姿の50歳ぐらいのサラリーマンが乗り込んできた。ラッポンの横の席に座り、4人の若者たちが日本人ではないとわかるや、なにやら英語で話始めた。よくいえば愛想のいい、悪く言えば妙になれなれしいおじさんだ。私は当初スリワンの横に座っていたが、しばらくの間席をはずして戻ってくると、その男性、なんと私の席に移動して、すっかりスリワンに密着しているではないか。見知らぬ人に妙に親切にしてしまう性癖をもつスリワンが、そのおじさんに、自分の弁当を分け与えたりしている。

私とラッポンの男二人組は、先に途中の下呂駅で降りて、ホームステイ先に向かうことになっていたので、私は高山に向かうため列車内に残された女子3名が、このおじさんに誘拐されるのではないかと、少し不安になったりもした。
 後日談であるが、日本旅行が終わってチェンライに戻ってくると、私宛てにメールが入っていて、「高山行きの列車の中で出会ったSと申します。子供たちに会って感動しました。さくらの子供たちの里親にならせてください」とあった。

 誘拐犯ではなかったようだ。しかもさくらプロジェクトの支援者になってくれるという。これはスリワンのお手柄というしかない。寮生たちをあと2週間ほど自由に旅行させていたら、うまくいけばさらに10人ぐらいの新里親を獲得していたかもしれないな、と思ったりする。

 さて、私とラッポンは、下呂駅で降り、萩原にある伊藤みね子さんという里親のお宅へ向かった。伊藤さんのお宅は飛騨牛の畜産農家をやっておられ、ご主人、厳悟さんの育てた牛は、全国的な牛の品評会で優勝したこともある。昨年、「どっちの料理ショー」とかいうテレビ番組の特選素材のコーナーにも出演されたとか。

 女子3人が一足早く高山市内に行ってしまい、熊の出そうなものすごい山奥にぽつんと立つ、築100年の一軒家(昔は養蚕をやっておられたそうだ)で少ししょんぼりしていた私とラッポンだが、夕食の時間になって、その表情は歓喜に変わった。夕食は新鮮な飛騨牛の焼肉である。

 ラッポンは一口食べて、「ウォー、うまい!」と獣のように叫んだ。そういう私も、目の前でジュワージュワーと甘く香りたつ湯気を立てている少女の頬のようにほんのり赤らんだ霜降り肉を目の当たりにして、理性を失いつつあった。口の中でとろけるようなジューシーな食感、これまで食べていたタイのゴム草履ステーキはいったいなんだったのだ、などと口走りつつ、ほとんど恍惚とした表情で、食べて食べて食べまくったのである。

 気がつくと、伊藤家で用意されていた大量の牛肉がすでに底をつきはじめていた。まさかこんなに大食いとは思われなかったに違いない。恥ずかしい!

 さて、外国人の日本旅行に際して、一番問題なのは、日本食が食べられるかどうかという問題である。大食いのラッポンはともかく、女子3名はやはり、日本食に抵抗を示しているようだった。料理の甘さもさることながら、日本料理の味の核ともいえる醤油と味噌の匂いが鼻につくらしいのだ。醤油をかいでは「くさー」、味噌をなめては「まずー」などと顔をしかめている。

 私など子供たちが自室で青マンゴーにガピ(エビ味噌)をつけて食っているところに遭遇すると、部屋中に充満したその悪臭のために失神しそうになる。あんなガピのような臭いものを平気で食べているやつらにだけは、醤油が臭いなどといわれたくないものだと、私もついムキになって日本食の繊細さを主張する。

 人間の舌にある味覚芽というものは遺伝的にその数が決まっており、その数はドイツ人やイギリス人には少なく、フランス人や日本人が多いといわれており、そのことがその国の食文化や味覚に対する感受性に影響を与えているといもいわれる。

 タイ料理も世界的に見れば、美食の国として知られているので、タイ人もきっと味覚芽の数は多いのだろう。しかし、刺身だけはうけつけないという人も多い。

 人間の食や味覚に対する嗜好や感受性は10歳までに決定されるともいわれる。つまり、10歳までに食べなれていない食べ物は、それ以降に食べてもおいしいと思えないことが多いのである。その点、日本人は子供の頃から和食はもちろんのこと、中華料理、西洋料理、インド料理、ピザにスパゲティー、ジャンキーフードなどをまんべんなく食べているので、食材、味覚ともに守備範囲は広い。

 さくら寮の子供たちの食に対する嗜好を観察していて感じるのは、その守備範囲の狭さである。まあ、しかたがない。なにしろ、山岳民族料理の調理法はいたって単純で、煮るか揚げるか炒めるか、使う調味料は塩と唐辛子のみという生活。

 訪日前、ホームステイ先のみなさんから、寮生たちの食事について問い合わせを受け、私はひそかにホストファミリーのみなさんに通達を出していた。「子供たちは、刺身とか寿司とか、生モノは苦手です。刺身の豪華盛り合わせなどを出していただいても、大半を残してしまいます。これは実にもったいない話です。でも、刺身に挑戦してみたいといっている子供もいますので、ちょっとだけなら、実験的に食べさせてみてもいいのでは……」

 今回は各ホームステイ先のみなさんもあらかじめ配慮されたのであろう、刺身類はここまでほとんど出てこなかった。実は私は、個人的にひそかに生ものを期待していたので、内心がっかりしていたのだが。

 しかし、ホストファミリーの伊藤家は、そんな私のひそかな期待に答えてか、飛騨牛をいただいた翌日の晩の食卓には、うって変わって海の幸のオンパレード。お刺身盛り合わせにあさりの味噌汁、冷奴、いなり寿司なども並んだ。
 昨夜は、その鬼気迫る食べっぷりにおいてかなりラッポンに押され気味だった私であるが、今夜は状況が一変した。ラッポンの箸がときどき空中でとまる。その困惑の表情のラッポンを尻目に、余裕でまぐろ、はまち、鮭、いかなどをまんべんなく口に運ぶ私。ふっふっふ。悪いな、ラッポン。ぱくぱく。あれ、遠慮しなくてもいいのに、ぱくぱく……。

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寮生日本へ行く(前)

2005/04/23 17:53 ジャンル: Category:さくら寮日誌
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タイの学校は3月から5月にかけて、長い長い学期休みになる。小、中学校で約2ヶ月、専門学校や大学になると、まるまる3ヶ月以上のビッグなホリデーになる。さくら寮の子供たちもこの間それぞれの村に帰っているのだが、毎年この間に、数人がちゃっかり結婚してしまっていたりする。

 そんな夏休みを利用して、4月7日から21日までの14日間、さくら寮の寮生4名が日本へ研修旅行に行ってきた。日頃寮生を支援してくださっている里親やさくらプロジェクトの支援者のご家庭にそれぞれ2~3泊させていただきながら、東京、岐阜、飛騨高山、豊橋などを旅してまわるというものである。ちなみに岐阜は私の実家でもある。

 今回訪日メンバーとして多数の希望者の中から選抜されたのは、男子1名、女子3名の4名。全員がさくら寮在寮7年以上の古株で、成績も普段の生活態度もよく、スタッフからの信頼も厚い寮生たちである。

 ラッポン・ワタナソンパン君(21歳)はモン族で、ラジャパッド・チェンライ大学コンピュータービジネス科の2年。趣味は動物を飼うこと。さくら寮では飼い犬の糞の処理係。血液型B型。

 ピンパー・サックモンコンサクンさん(17歳)はヤオ族。職業専門学校秘書科(2年生)で学んでいる。趣味は映画と音楽鑑賞。韓国映画が好きで、あのヨン様のファンだとか。血液型B型。

 スリワン・ジャピさん(20歳)はラフ族で、職業専門学校洋裁科の3年生。趣味は寝ること、食べること、テレビを見ること(なんじゃそれは)。血液型AB型。

 ラダー・アタポンプーシットさん(16歳)はモン族、職業専門学校洋裁科の2年生である。趣味はギター。血液型O型。4人の中で年は一番若いが、一番のしっかり者で、他の3人をしきりまくっている。

 そして付き添いとして私が全行程をともにした。岐阜から京都まで車で日帰り見学をして帰ってくるという日もあったりして、14日間休養日なしのかなりの強行スケジュールではあったが、私自身にとっても、タイの4月の焼け付くような暑さと、もはや食傷気味のソンクラーン祭りの喧騒から逃れ、日本で満開のさくらを見て、日本食を毎日食べられるとあっては、役得以外の何ものでもない。

 さて、寮生たちが今回訪日するにあたってやってみたいことは、
① 超高層ビルの一番高いところに登ってみたい。
② 雪を見たい。
③ さくらの花を見たい。
④ 富士山を見たい。
⑤ 新幹線に乗りたい。
⑥ 動物園に行きたい。
⑦ ディズニーランドへ行きたい。
⑧ 大きな海老を食べたい。(全員、体長5センチ以上のエビを食べたことがない)
⑨ 海を見たい。

 というかなり欲張りなものだったが、ホームステイ先の皆さんのご協力により、富士山を見ること意外はすべて達成できた。(富士山は名古屋に向かう新幹線の中から見える予定だったのだが、あいにくの雨空で、まったく見えなかった)。

 ちなみに寮生たちが日本で一番恐れていたことは、一緒に温泉に入らされるはめになるのではということだった。「温泉はみな素っ裸になって入るんだよ。露天風呂や混浴だってあるんだから」という私に、女子全員が恐れおののいた。タイには混浴はおろか、みなで一緒に風呂に入るという習慣はない。女子は個室で水浴びするときですら、サロンを身にまとったままだ。以前、日本から若い元気な女子学生がさくら寮に遊びに来て、子供たちと仲良くなり、共同浴室で一緒に水浴びしようということになったのだが、その女子大生、いきなり子供たちの前でスッポンポンの丸裸になってしまい、寮生たちは目が点になっていた。

 もとより研修とはいっても、2週間という、観光旅行に毛が生えた程度の短い旅程であるから、たいしたことは学べないかもしれない。しかし、日本の自然、日本の空気、日本の食べ物、日本の家庭に触れることで、かすかでも「日本的なるもの」「日本風」を感じとってくれればそれでよい。

 4名には、メンバーが決定した12月初旬から約4ヶ月にわたって集中的に日本語を特訓してきたので、全員、いささか怪しげながら、簡単な日本語会話ができるまでになっていた。また、学期休みに入った3月初旬からの1ヶ月間は、日本での連日のハードスケジュールにそなえ、私を含め全員が毎日夕方1時間半から2時間のウォーキングで体を鍛えた。これは私自身の健康のためでもある。日本では、タイにいるときに比べてはるかに歩くのである。電車の乗り換え、買い物、ディズニーランドや遊園地、動物園でも歩き回る。鍛えていかないとすぐに息切れがして、生徒たちに迷惑がかかる。

 今回のメンバーは厳正な選考会によって選抜された心身ともに健全かつ屈強なメンバーばかりなので、健康状態も万全、度胸もすわっている。はじめて乗る飛行機にもビビルことなく、堂々としていた。

 しかし、のっけからハプニングも続出。見知らぬ人にやけに親切にしてしまうという妙な性癖をもつスリワンが、さっそく飛行機の中で隣りあわせた乗客に自分の食事を分けあたりしている。しかし、スリワンはスチュワーデスの配っていたジュースのトレイに手をかけた瞬間、トマトジュースのコップを床にぶちまけてしまい、赤い液体が後ろに座っていた日本人のおじさんのズボンを直撃してしまった。スリワンはさっそく日本語で謝った。「どういたしまして」。違うぞ、日本語が!(続く)

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写真1:民族衣装に着替えて、東京・芝浦工大で行われた支援者の集いで挨拶する寮
生たち。左よりスリワンさん、ラダーさん、ピンパーさん、ラッポン君。
写真2: アジアからの旅行者の定番(?)ディズニーランドで。
写真3: 岐阜ではさくらが満開だった。


プロフィール

三輪隆

Author:三輪隆
1955年岐阜県生まれ。写真家・文筆家。タイ在住26年。さくらプロジェクト代表。

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